きらびやかでもないけれどこの一本の手綱をはなさずこの陰暗の地域を過ぎる!その志明らかなれば冬の夜を我は嘆かず人々の憔懆(せうさう)のみの愁(かな)しみや憧れに引廻される女等の鼻唄をわが瑣細なる罰と感じそが、わが皮膚を刺すにまかす。
蹌踉(よろ)めくままに静もりを保ち、聊(いささ)かは儀文めいた心地をもつてわれはわが怠惰を諫(いさ)める寒月の下を往きながら。
陽気で、坦々として、而(しか)も己を売らないことをと、わが魂の願ふことであつた!
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