黝(あをぐろ)い石に夏の日が照りつけ、庭の地面が、朱色に睡つてゐた。
地平の果に蒸気が立つて、世の亡ぶ、兆(きざし)のやうだつた。
麦田には風が低く打ち、おぼろで、灰色だつた。 翔(と)びゆく雲の落とす影のやうに、田の面(も)を過ぎる、昔の巨人の姿――
夏の日の午(ひる)過ぎ時刻誰彼の午睡(ひるね)するとき、私は野原を走つて行つた……
私は希望を唇に噛みつぶして私はギロギロする目で諦めてゐた……噫(ああ)、生きてゐた、私は生きてゐた!
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